スティーブン・キング著「眠れる美女たち」を読みました。
上巻469+下巻439、合計908ページと言う大作なんですが、ムリに長くしてしまったんじゃないかなって気がしました。
そんな大作の読後感を書きます、ネタバレだらけなので、そういうの嫌いな方は読まないほうが良いと思います。
スティーブン・キングの作品としては他にも書いている人がいますが、物足りない。
スリル・臨場感・恐怖が不足してるように思いました。
登場人物が多すぎる
ごく普通の人々、と言っても囚人だったり麻薬中毒者だったりなので、「普通」じゃないのかも知れませんが、そんな人々が登場しますが、とりあえず、多すぎると思いました。
これらの人の日常と感情と過去を詳細に語り、そこに異常な環境に変化を持ち込み、翻弄される人々を描く・・・キング得意の手法だと思います。
読者を感情移入させ、リアルを感じさせ、ファンタジーな(非科学的な)空間に違和感なく誘い込む・・・というキングの手法なんですが、多すぎて、入り切らないのです。
登場人物の必然性が感じられない部分も多すぎます。
(なんでこの人出てきたんだろ?)と首をひねる人物が多いのです。
イーヴィ
まずこの女性がわからないです。宇宙人だとか、神が遣わしたとかは明らかでなくて良いのですが、登場する理由が想像もできない。雑に登場させたの?と思ってしまいます。
そうして存在理由もですが、登場仕方も納得できない。
麻薬密売者を惨殺して登場するんですが、華々しいだけで、そうする理由がわかりません。ずっと頭の隅っこにこの疑問が残っていて、後の方で、納得できる理由が出てくるのかな?と思っていました。
どこかで、麻薬と人間の関わりみたいなことが語られて、麻薬密売業者惨殺とつながっている・・・とかを考えていたのですが、そんなものはないまま物語は終わってしまいます。
ジャネット
大樹を燃やそうとする女の行動をとめるために「私たちの地」に行くが、最終的に炎を消すのは虎であり、ジャネットは、ライラに射殺されてしまう。これで良かったのか?イーヴィのたくらみはどうだったのか?
ケイリーとモーラ
イーヴィの作戦(?)によっぽど重要であるような雰囲気でこの二人は、覚醒させられるのですが、民警団の一人か二人を殺すだけで、その登場シーンがあっさりと終わってしまいます。なんのために登場させたんだろう???と考えてしまいます。
虎・狐・孔雀
これらの動物たちもなんの象徴だったのでしょう?ただファンタジー色のために出してみたけど、それから先を思いつかなかったんでしょうか。
他の作品
「呪われた街」とか新しいところでは「任務の終わり」「骨の袋」「グリーマイル」などなど読んできましたが、今までのキングの作品は、
- 登場人物に感情移入できる
- ストーリーというか設定に納得できる
この2点はハズレがなかったと思います。
感情移入の度合いは、時として涙を誘われましたし、設定に違和感を抱いたことはありません。この作品は、上記の2点が内容に思います。この設定の部分は大事で、キングの作品は、SF的に説明がつかない事が多いのですがそれはその作品の世界観ってことで納得できますが、この作品は、疑問だらけです。
「任務の終わり」を「眠れる美女たち」の少し前に読みまして、出版年から見ると「眠れる美女たち」が先なんですね。日本での出版年なので原作の順番とおいなじかドウかはわかりませんが。
この2作の印象では、「任務の終わり」の方が、過去に読んできたキングの作品の流れに感じますし、登場人物への共感も深かったです。
そこから類推すると、キング自信が年取って作風が変わったのではないと思います。「眠れる美女たち」の読後感で『キングも年いったのかな』って意見があったのですが、そうはないように感じました。
むしろ、「息子オーウェン・キング」との共著が影響してるのかな?と思いました。
主題
作品の主題は、「男女間の差」と言ったところなんだと思います。「男性」が争いを起こし、犯罪の大部分を担い、男女間のもつれや暴力沙汰のほとんどの原因になる。女性のみの世界があれば、温和で平和な世界になる・・・との思想のようです。
それなら、キングは、日本に住んで見ればよいのでは・・・と思います。日本式の長い歴史の民主主義を知り、力で奪い合うのではなく、お互いを思いやる日本人の感覚を知れば相当違うのではないでしょうか。
まとめ
スティーブン・キング著「眠れる美女たち」の感想をまとめました。
これまでの作品とは、かなり差があるように思います。
ただ、それでも楽しめはします。キングならもっと怖い、リアルだってところを気にしなければ充分楽しめる作品であるとは思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。